チアリーディングの部活中、校庭に謎のローブの人物が現れた! さくらはカードを使って立ち向かうが、小狼が駆けつけると、その人物は消えてしまい…? そして、さくらは小狼に促されて、不思議な夢の内容を打ち明けることに――。
48話
さくらがゆっくり目を開けると、そこにはキラキラと輝く星達と時計の世界、そしていつものローブを着る者がいました。
夢なのをさくらは確信しています。
ローブの者に、でもこれはただの夢なのか、それとも小狼が言うように予知夢なのかをさくらは聞きます。
勿論、ローブの者はいつものように答えません。
続けて私達もう逢ってるの?とさくらが聞きます。
次の瞬間、勢いよく何かがさくらを横切り、ローブの者の隣に着きます。
以前見たあの巨大な生物がローブの者の隣に並んだのです。
そして、スッとローブの者が手を挙げるとさくらの胸元にある夢の鍵が浮かび上がります。
寂しそうに見えるローブの者と巨大な生物に近づきながらさくらは鍵があれば、あなたは変わるのかと聞きます。
更に声を掛けかけながら近づき手を伸ばしたところで、さくらの目が覚めます。
起きても尚、寂しそうに見えたローブの者を思い、さくらは胸の前で手を握るのでした。
同じ頃、秋穂もまた目を覚まし、不安そうに胸の前で手を握っていました。
部屋の窓を開け庭へ出ます。
そこにはとても大きな満月の下、1人光に照らされた海渡の姿がありました。
いつもの優し気な表情で秋穂の方に振り返り、何かあったのか海渡は聞きます。
何気なく目が覚めてしまったことを秋穂は伝えるなか、海渡の表情が青く悪く見えることに気付き問います。
海渡は月のせいでは、と答えるが不安は消えない様子です。
その後、秋穂は少し頬を赤くしながら意を決した様子で話しかけます。
もう少し話したいこと、そして夏目漱石の有名なある言葉で海渡に想いを伝えます。
海渡は驚き、真っ赤な顔で秋穂は俯きます。
それを見て笑顔で海渡は承諾し、秋穂もまた笑顔になるのでした。
さくらは学校へ登校し、教室へ向かいます。
向かう途中に聞こえてきたのは無理だ!と大きな声で叫ぶ小狼の声でした。
1-3の教室からです。
教室を覗くと柳沢さんが劇の出演を小狼にお願いしているようです。
覗いているとさくらの隣に山崎君がやってきて一緒に見守ります。
普段断れない男の小狼ですが、今回はかなり渋っている様子。
ぐいぐいくる柳沢さんの交渉に小狼は頭を抱えぐるぐる混乱しているなか、さくらと山崎君が入口から様子を見守っていることに気付きます。
さくらを見つけた小狼は慌てて凛々しい姿に戻し、さくらと山崎君におはよう!!と声をかけました。
そして次のデートのことをさくらと小狼は笑顔で幸せそうに話し合います。
そんな二人を傍で山崎さんと柳沢さんは優しく見守っていると、そのことに気付いたさくらと小狼は真っ赤に照れて慌てて離れるのでした。
1-2に移動したさくらは窓に映る自分を見ている秋穂に挨拶をします。
さくらは秋穂の目が赤いことに気付き、心配そうに聞くと夜更かししたと秋穂は言いました。
すると、私もです!と、知世ちゃんが来て元気いっぱいに言います。
二つのお団子ヘアで現れた彼女はキラキラとした目で衣装作りが捗ったことを話します。
それに秋穂はわくわくしながら何の衣装か聞くと、横でさくらは焦ります。
しかし知世はプライベート用ですとニッコリ笑顔で堂々と言うのでした。
秋穂のケロちゃん達の洋服も進んだことをさくらが話すと、秋穂はでも指を刺してばかりと答えます。
それを聞いてさくらが私も頑張る!と言うと、横で秋穂は笑顔になりました。
笑顔になった秋穂を見て少し驚くさくらと知世に一緒にできることが凄く嬉しい、と秋穂は言います。
さくらは秋穂の手を握り、私も一緒で嬉しい!と答えるのでした。
すると、カチッと時計の針が動く音がなります。
さくらは驚き、二人に聞こえなかったか聞くも二人は動きません。
周りを見るとみんなも動かなくなっていました。
慌てて教室を出ると小狼もまた慌てて教室を出てきました。
廊下で二人は顔を合わせ、さくらは動揺しながらも小狼に突然みんなが止まってしまったことを言います。
二人は緊張した表情で辺りを見回します。
すると突然、小狼は自分の胸を押さえ苦しみだしてしまいます。
そして小狼の押さえる胸が光りだします。
その瞬間、次々とさくらカードが飛び散って行ってしまいます!
小狼の方を振り向き、驚くさくらは小狼の名前を叫ぶのでした…
49話
さくらと小狼はキラキラと光るカード達に囲まれています。
胸を押さえ苦しみ膝をつく小狼からさくらカードが出てしまったのです。
さくらは驚き、目を丸くしながら小狼に駆け寄ります。
すると、カード達は勢いよくさくらの横を抜け、飛んで行ってしまいます。
駆け寄ってきたさくらに小狼はよろめきながら大丈夫だ!と言い、立ち上がります。
そして追うぞ!と動き出す小狼に心配そうに戸惑いながらもさくらは一緒に追いかけます。
凄いスピードで飛んでいくカード達は学校の玄関を抜け、外へ飛んで行ってしまいます。
飛んでいくカードの後ろで杖を解除し、包囲を使いカード達を囲いさくらは捕まえます。
捕まったカードは小狼の元へ集まっていきます。
しかし、数枚のカードが包囲の範囲から外れ、飛んで行ってしまいます。
今度は小狼が剣を出し、取り戻した翔のカードを使います。
剣を片手に持ち、背中に羽根をつけてカードを追いかけます。
更に風のカードで残りのカードを集めます。
小狼の後を追ってさくらが駆け寄ってきます。
無事カード達を取り戻した小狼にさくらは声を掛けます。
するとカード達を見つめ、驚いた表情をした小狼は鏡のカードがない!と言うのでした。
その後、止まってたみんなは元に戻った、また私なのかとさくらは思ったけど、とスケッチブックをさくらは握ります。
そしてあの後小狼にさくらの力じゃない気がする、言われたことを思い出します。
誰が、鏡のカードはどこへ、と考えてるさくらに秋穂が声を掛けてきました。
二人組になってお互いの顔をスケッチするように、と先生が言っているようです。
知世ちゃんは千春ちゃんと、さくらは秋穂と組むことになりました。
描きながら秋穂は少し頬を染めながら昨日の夜のことを話しだします。
うちの庭を海渡と夜に散歩をしたと言います。
月明かりに照らされ、星が輝くなかで空を見ながら庭を歩く秋穂とその横を笑顔で秋穂の方を見ながら海渡は歩きます。
殆ど話していたのは私で色んな国を二人で一緒に旅をしたこと、日本に来てからの日々のことを海渡は全部覚えていてくれたと秋穂は言います。
愛おしそうに目を伏せ、凄く小さなことまで全部と語ります。
さくらは嬉しいね!と笑いかけます。
それに笑顔で秋穂は頷きます。
更に私にとって海渡との出来事は全部大切だから、海渡にも一つだけでもそうだといいな、と言いました。
さくらは大切な人との思い出は宝物だからその人も同じだと嬉しいよね、と秋穂に言います。
今まで関わってきた色んな人達を思い浮かべながら、その思いでと一緒に幸せな気持ちでいてほしいと言います。
秋穂を見つめ、それは秋穂も幸せでいてほしい人だよと言います。
その言葉に目を大きく広げ、口を開けて驚き、秋穂は固まってしまいます。
さくらは秋穂を下から覗きこむように見て、私の大切な友達だから、と笑いかけます。
秋穂の目には涙が溢れます。
さくらは慌てて立ち上がります。
スケッチブックを握りながら秋穂は何もできない子、役に立たないとみんな言ってたと言います。
ぽろぽろと泣く秋穂を包むようにさくらは抱きしめます。
さくらが心配そうに抱きしめるなか、誰も私に幸せになってほしいなんて言ってくてなかったと言います。
そう秋穂が言った瞬間、急にモヤがかかり、二人の周りで大きな本のページのような紙が巻き上がります。
秋穂をモヤが包み、紙達はさくらを包み二人を離します。
必死に秋穂にさくらは手を伸ばしますが届きません。
紙は巻き上がり、次第にフワリと花びらに変わっていきます。
花の中央に包まれ高く浮くさくらとそれを秋穂は見上げています。
暗いモヤの世界で大きな時計の針が浮かび、カチッと音を鳴らしました。
すると暗いモヤは明るい森に変わり、そして時が止まります。
そして、驚いているさくらの胸元が光り出します。
光り出てきたのは以前貰ったお母さんの時計でした。
カチッと秒針が動きます。
すると今度は秋穂の横が光り、焦り秋穂の名前を呼びながらモモが姿を現します。
それにさくらは驚き、モモもさくらを見て驚きます。
モモは海渡が時を止めたと思ったけど違ったようね、と言います。
さくらの時計を見つめ、その時計が時の魔法を発動させた、と話します。
驚くさくらに続けて、動くことを時計に許されたのは私と貴女だけ、と言います。
モモは片方の手を口元に置き、片方は腕組みをしながらニヤリと笑います。
そして光りに包まれながら、どうしようかしら、と呟くのでした。
50話
ふふふ、と不気味に笑うモモにさくらは驚いた顔で見つめます。
花に包まれたさくらは秋穂の名前を叫びます。
そして、秋穂が泣いていたから、どこか凄く痛いのかも!とモモに訴えかけます。
モモは驚きます。
更に、モモちゃん分かるかな?私にできることはある!?とさくらは話しかけます。
暫く呆然とモモはさくらを見つめ、次第に笑い出します。
真剣な表情のさくらはモモちゃん?と心配そうに見つめます。
モモはふうとため息をつき、あなたはそういう子よね、と眉を下げながら口角を上げます。
顔に手を当て、ていうか私が動いて話してるのに突っ込まないのね、と首をかしげます。
秋穂が心配で、それにぬいぐるみが動くのは慣れてるっていうか、とさくらは答えます。
ケルベロスとスピネル・サンもその類だものね、とモモは言い腕を組みます。
二人の名前を知っていることに驚くさくらにクロウ・リードは界隈では超有名人だし、あなたのことも知っていると言います。
さくらにかけられたエリオルの齟齬(そご)の術を私が越えられたからだと言うモモはある程度の力しかない術者にはあなたの魔力の少しでさえ感じられないでしょうねと言います。
その魔法は強い力を持つさくらが悪意にさらされないよう大事にかけられたもの、更に、その上に月の力を重ね掛けされている、と話します。
そして、あの子があんなことを考えてしまう程に貴女は愛され、守られているとモモは下を向きます。
あの子?とさくらは呟き、眉を下げます。
すると、フォンと音が鳴り、モモが手を広げると光と共に本が現れました。
その本!秋穂ちゃんの!と叫ぶさくらに秋穂のもとにあるけど、秋穂のものではないとモモは答えます。
時計の国のアリスって題名だって、とさくらが呟くとそう秋穂が望んだからだ、とモモは答えます。
仮の主としてその人が呼ぶ名前がその場、その時の本と私の名前になる、と言います。
ケロちゃんやユエさんみたいに本の守護者なの?とさくらは聞きます。
確かにそうだけど、私は二つに分かれていない、とモモが言うと本とモモを光が包みます。
すると、霧がかかり、光に包まれるモモはドレスに身を包んだ人の形になりました。
その姿を見たさくらはモモさん?と聞きます。
キラキラと光るモモはそれも秋穂が望んだ名前で真名ではない、と答えます。
そして、あなたは何故カードを創ってしまうのか分かる?と強い力を制御できなくて無意識に?とさくらに問います。
違うの?とさくらは聞き返し、モモはニコリと笑い、正しくもあると言います。
でもそれを誰かに利用されてるとしたら?とさくらを見つめます。
戸惑うさくらにモモが手を差し出すと本が光りました。
それを教えるのは契約違反だけどヒントをみせることは出来る、と言いうと本に描かれた時計がグルグルとまわり出します。
フォンと風に包まれたさくらの服装が変わり、本はモモの手の上でカチコチと音を出しています。
では、行きましょう、とモモは言い、手を上に上げるとさくらの胸元に時計が付き、ビシビシと花が割れます。
アリス、とモモは呟くとガシャンっと大きな音を立て本の花が割れるのでした。
その頃、異変を察知した海渡は持っていた花とハサミを落とし、苦しそうに胸を抑えます。
こちらの具合が悪いのを知った上で真の姿で魔法を使いましたね、と呟き汗をかきます。
更に海渡の持っている時計にピシピシとヒビが入ります。
それを見つめた海渡は、いよいよ俺自身の時間がなくなってきたようだ、と目を細めるのでした。
アリス、とさくらを呼ぶモモは色んな困難を乗り越えても尚、大丈夫と言えたのは何故?あなたの不幸とは何?と問います。
そんなモモの声が響くなか、さくらはガラスの破片と共に真っ逆さまに落ちています。
そして、さくらが付いた先には張りぼてで出来た木々が並んでいます。
なんだか見覚えがある、とさくらは進むとさくらの家が現れます。
さくらが驚いていると玄関を開け、お父さんが出てくるのでした。
張りぼてで出来た玄関先の門まで来たお父さんにさくらは掛けより、話しかけます。
すると、お父さんを探しているのかな?とお父さんは首を少し傾げながらさくらに聞くのでした。
51話
本を護るモモが誘い込み、さくらは不思議な世界へと迷い込みました。
目の前に現れたお父さんの言葉に傷ついた顔をさくらはしています。
玄関を開け、今度はお兄ちゃんがやってきました。
お兄ちゃん、お父さんが!とさくらは訴えかけようとしますが、なんだ?と答えます。
お父さんは、お父さんとお兄ちゃんを探してるみたいだねと言います。
顔を曇らせたさくらはダッと走りだし、去って行きます。
街を彷徨っていると目の前で歩く知世ちゃんの姿がありました。
声を掛けると知世はニッコリほほ笑みます。
そして、どこかでお会いしていましたか?と言います。
お顔を覚えるのは得意なはずなんですが、と顔に手を当てて悩む知世ちゃんにさくらは戸惑います。
後ずさりしていると、今度はクラスのみんながやってきますが、さくらをすりぬけて知世ちゃんにおはよう、と挨拶をします。
更にお友達?とさくらの顔を覗きます。
知世ちゃんはいいえ、と笑顔で答えるのでした。
ショックで涙ぐむさくらはまた走り出します。
すると、小狼がいました。
小狼の方へ走り出し、声をかけるさくらに小狼は目を見開き、誰だ?と答えます。
さくらは口を開いたまま固まり、目にはいっぱいの涙を貯めています。
パキパキと音がなり、割れた空間にさくらは吸い込まれ落ちていきます。
小狼に手を伸ばしながら真っ暗な世界に落ちていくさくらは破片と共にスっと止まります。
その様子を見つめるモモは後ろを振り返り、時の魔法を使うのは止めなさいと言ったでしょうと言います。
緊急事態だったので、と答える海渡の姿がありました。
また時を戻すの?とモモは聞きます。
そのつもりだ、と言う海渡はさくらの魔力は成長し続けている、この魔法もいつまで通用するかと言います。
わかっているのね、と言うモモに海渡は魔法を発動させるためのカードを作ってもらわなければと杖を見つめます。
モモは海渡をまっすぐ見つめ、あなたは私と契約するときに本当の名前である真名を明かしたと話します。
つまり魔術師としての心臓が私の手の中にあると言っていい、そんな危ない賭けをしても本の力を欲しがったと語りかけます。
海渡は魔法を発動、完成させるにはカードとあなたの本が必要だからと笑います。
何故?と聞くモモに先ほど説明した、と海渡は答えます。
モモはまさに命を賭けて望む魔法を完成させようとしていると言います。
成就される術を知ったからと答える海渡に貴方の魔力では殆どのことはすぐ出来てしまう上に貴方にはあるものがなかったからとモモは続けます。
更に何故と問われて分からないのなら誰のために?とモモは海渡を見つめます。
海渡は目を大きく見開きモモを見つめます。
パリンっと暗い世界は割れ散り、時が動き出します。
意識の戻ったさくらの目の前には倒れた秋穂がいます。
秋穂の名前を呼び続けるさくらにクラスのみんなは駆け寄るのでした。
草むらに隠れたモモは人形の姿に戻り、時を望むように戻し切れなかったようねとつぶやきます。
そして早々に立ち去ったと言い、確かに海渡は何もかも過去は面倒で退屈で誰にも興味がなかったと過去を思い出します。
でもどんな人もどんな人生を歩んでも変わるきっかけの何かがあれば人は同じではいられないと言います。
心に気づきなさい、とモモはまっすぐ前を見つめるのでした。
自宅の玄関の前に立ち家を眺めるとただいまと入って行きました。
ケロちゃんとハピネスがルンルンで出迎えます。
しかし、不安げなさくらに気づき駆け寄るとさくらは鏡のカードだけ回収出来なかったことを話だします。
小狼が家で集中して探すと話し、秋穂が倒れていたこと、それがいつなのか分からないと言います。
胸に手を当てるとそれに家に帰ってきた時に何だか怖かったと言います。
ハピネスが不穏な気配?と聞くとさくらは首を振ります。
あれは幸せの反対な気持ち、と眉をひそめます。
ケロちゃんとハピネスは顔を見合わせます。
それに、と言いさくらは新しいカードを出します。
そして、いつカードが作られたのか分からないのと答えるのでした。
歪んだ背景にはTIMEと書かれた時計のようなカードが描かれているのでした。
52話
遠くを見つめるさくらをケロちゃんとハピは心配そうに見つめています。
昨日の今日だし、やっぱり気持ちは晴れないでしょうねとハピは呟きます。
カードがいつ出来たかは分からないけど、さくらのお母さんがくれた時計と同じ絵であり、その時計自体はどこを探してもないとケロちゃんとハピは話します。
すると、おはようと声が聞こえました。
ボーとしていたさくらは驚き振り返るとそこには小狼が立っていました。
挨拶をぎこちない笑顔で返すさくらに小狼は手を伸ばします。
伸ばした手を途中でグッと握り、触れないんだったな、と呟き手を見つめます。
そんな小狼に驚きつつもどうしたの?とさくらは聞きます。
小狼はさくらを見つめ、さくらが辛そうだったと言うのでした。
すると、さくらは目を見開き、頬を染めニッコリと笑い、ありがとうと言うのでした。
幸せと反対の気持ちは気のせいかもしれないけど、とさくらは小狼に説明します。
小狼はもしそうだとしても魔力を持つ者のいわゆる感は無視してはいけないと母上から教わったと言います。
魔力を持つ者に限らず、人は心の動きに目を逸らしてはいけない、と話すのでした。
さくらは胸に手を当て心、と繰り返すのでした。
学校のチャイムが鳴り、何も答えが出せなくてすまない、と小狼は謝ります。
それに首を振ったさくらは手を伸ばし、小狼もまた手を伸ばします。
二人の手の間には空間があり、触れることはできません。
しかし、さくらは小狼が傍にいてくれて本当に良かったと笑うのでした。
教室に着いたさくらの鞄の中では、ケロちゃんとハピがひそひそと話をしていました。
わいらは完全に気配を消せてた!とガッツポーズをケロちゃんはしています。
小狼が来てから完全にわいらのこと忘れてたと言います。
それだけ真剣に話していたのでしょうとハピは答えます。
さくらもちょっとは元気取り戻したみたいだし、ぬいぐるみのフリもレベルアップしたし!とケロちゃんは目を光らせるのでした。
仲良く知世ちゃんと話をしていたさくらは途中口角を上げながら知世ちゃんを見つめます。
その様子に何かあったのか知世ちゃんは聞きます。
なんでもない!ただ知世ちゃんとこうやって話ができるのが嬉しくて!とさくらは笑かけます。
そして、秋穂の席が空席なことに気付き、心配だねと知世ちゃんと話します。
一方、ベッドにいた秋穂のスマホにメッセージが届き、秋穂の顔はパァっと明るくなりました。
そこへお水を持った海渡が入ってきました。
もう平熱だし大丈夫!と言う秋穂にニッコリとほほ笑みます。
でもどうして突然倒れたのか分からないと秋穂はギュッとスマホを握ります。
そんな秋穂の横でモモはぬいぐるみのフリをしながらジーッと海渡を見つめます。
しかし、海渡はニッコリとほほ笑みながら何か良い事でもあったのか秋穂に聞きます。
さくらがメッセージをくれたと話す秋穂はそんなに私は分かりやすい!?と顔を赤くします。
どうでしょうと海渡は答えます。
そんな海渡を秋穂はジッと見つめます。
何か?と聞く海渡に体調良くない?と秋穂は問います。
いいえ、と笑う海渡にでも辛そうです、と秋穂は眉を下げながら言います。
気のせいだと答える海渡を真剣に見つめ、胸元でぎゅっと手を握ります。
朝食を取りに行く海渡を呼び止め、まだ本当に頼りないと思うけど海渡と出会って変われたことがあるんです!と話します。
だから、と続ける秋穂にニッコリと海渡は表情を暗くしながらもニッコリとほほ笑みます。
そして、秋穂の言葉に被せるようにプリンもお持ちしますねと立ち去るのでした。
パタンと閉められたドアを見つめる秋穂はギュッと握った手を口元に持っていくと目を閉じながら海渡の名前を呟くのでした。
そんな秋穂の横ではモモが鬼のような顔付きで海渡の名前を心の中で叫んでいるのでした。
廊下を歩く海渡は、はは、と言い、顔に汗をかきながら震える手をギュッと握っています。
その手を開き見つめなが何故震えてるんだと呟きます。
海渡は両手を広げるとヴオンと音が鳴り、風が舞います。
中央に光るカードが浮かび上がります。
光るミラーのカードを潤む目で見つめ、折角手に入れた切り札は有効に使わせていただくと呟きます。
顔に汗を垂らしながら術の完遂の為にと言い、不敵な笑みを浮かべるのでした。
53話
みんなが寝静まった夜、パチッと目を開け、ピコンっと耳を立てたハピネスが隣に眠るケロちゃんを起こします。
寝言を言い続けるケロちゃんにイラだち、ほっぺをつねり起こします。
怒るケロちゃんにそんなことよりいないんです、とハピネスは眉を潜めて言います。
まだ6時なのにと二人は時計を覗きこんだ後、そろりとキッチンへ向かいます。
おはよう!と片手に卵焼きを持ったさくらは言い、お父さんもお兄ちゃんもいないよ!と付け加えます。
ホッと一息ついた二人はさくらも元へと近づき、出来上がったお弁当を覗き顔を輝かせます。
今日は小僧とデートやな!と言うケロちゃんにさくらは顔を真っ赤にしながら私のお弁当を全部食べてもらいたいからとごにょごにょと呟きます。
二人の分もあるよ!と言うさくらにケロちゃんは大喜びします。
そんなケロちゃんを押しのけて、こちらで待機してますので何かあれば携帯に連絡を、とハピネスは言います。
ニッコリとほほ笑み、何かあれば貴女と一緒の人が頑張るでしょうがと伝えます。
今日は楽しんで来てくださいと言うハピネス達にさくらは笑いかけお礼を言うのでした。
髪の一部を編み込みし、モモどうかな?と秋穂はくるっと回ってみせます。
良くに合ってるわ、とモモは心の中で返事をしていました。
持ち物を再度確認する秋穂は後は言うだけと呟きます。
ドアのノックが鳴るとともに海渡の名前を勢いよく呼び、入ってくる海渡に秋穂は駆け寄ります。
そして、晴れです!お弁当を持ってお出かけしましょう!と言うのでした。
植物園へ着き、前と同じ所で良かったのか?と聞く小狼に季節が違うから見れるお花も違うし、とさくらは答えます。
それにここなら小狼とゆっくり話せるからと言い、小狼の顔は真っ赤に染まるのでした。
行こう!と中へ進んだ二人の目の前には秋穂と海渡の姿があり、お互いに驚くのでした。
その頃、秋穂の家で指を指し、何で会うのよ!とモモはツッコミを入れていました。
それぞれ二人っきりで出かけたのに何で!?と真の姿でソファに座りながら魔法の画面で4人を見ています。
まさか術で、と海渡を見ますが今回決めたのは秋穂だしと呟きます。
でも今日は!とワイングラスを机に叩きつけ、勢いよくチョコを頬張ると秋穂を過ごす以外で何かしようとしたら手荒に行くわよ海渡!と眉を潜めるのでした。
小川が流れる森の中で秋穂はよろしかったんでしょうか?とさくらに聞きます。
もちろん!それに広い植物園なのにどこに行くにも会っちゃったしね、とさくらは笑いかけます。
秋穂達も良かったの?と聞くさくらにご一緒できて嬉しいと秋穂は答えます。
それに海渡とこうやって出かけれて本当に良かったと海渡を見つめ微笑むのでした。
2人が話すなか、小狼と海渡はシートを広げ、もくもくとランチの準備をしていました。
顔が勝手に笑顔になる、おまけに海渡に何か言おうとすると口が開かない!と小狼は心の中で叫びます。
ニッコリと二人微笑みながらもこれもこの人の術か、とほほ笑みながらも顔に汗をかくのでした。
一方、ゆきととテレビ電話をしているケロちゃんとハピネスは今日はさくらはデートだと話します。
そんな雪兎の後ろから私もデートしたい!とルビーが顔を出します。
私と雪兎と桃矢君で!と騒ぐルビーをハピネスはなだめます。
ケーキを頬張りながら、そういえば桃矢は?とケロちゃんは聞きます。
植物園でバイトだよ!と言う雪兎とルビーの答えにケロちゃんとハピネスは、え?と思わず顔を見合わせるのでした。
その頃、さくら達は4人手を合わせランチをしていました。
すると、その近くで桃矢が庭の手入れをしていました。
その姿を見付けた秋穂は大きな目と口を開け、お兄様と呟きます。
その言葉にドクンと心臓が鳴ったさくらは目を見開きながら秋穂の方に振り返ります。
何この今の感じ、と不安な表情を浮かべるのでした。
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